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対談

JFインタビューシリーズ(11号):
佐々木康人氏(華道家)、ハノイ大学いけばなクラブ
15/06/2011 12:46

みなさんこんにちは! 私は今、佐々木康人先生のいけばな講習会に来ています。ベトナム日本文化交流センター主催のいけばなワークショップに参加した方は、先生のことを覚えておられるかもしれません。佐々木先生は明るく、ユーモアに溢れ、それでいて礼儀正しく、私たちに、花の命に敬意をはらうことを教えてくださいました。今回ベトナムを再訪された理由も含め、佐々木先生にお話をうかがってみましょう。


 

JF: 佐々木先生、こんにちは! 本日はよろしくお願いします。まず、先生が今回、ベトナム再訪を決めた理由をうかがえますか?

佐々木康人先生: ベトナムの皆さんこんにちは。この美しい国に再び戻ってくることができ、大変うれしく思います。今回はハノイ大学いけばなクラブのお招きをうけ参りました。いけばなを教えるだけでなく学生との交流の機会が得られ、光栄に思っています。ハノイ大学で日本語を教えられている宮崎隆彦先生の尽力で設立されたいけばなクラブ、実際には宮崎先生が、直接私の所属先である日本のいけばな協会、池坊華道会に連絡をとってくださいました。

ほとんどの学生は、私が昨年ハノイで開催したいけばなワークショップの参加者です。皆さん、ほんとうに一生懸命で、いけばなが大好きです。いけばなという芸術に対する彼らの意気込みや想いが伝わってきて、私もとても嬉しく思います。


佐々木康人先生はベトナムでいけばなを教えました。


 

JF: いけばなの起源や歴史について、少し紹介していただけませんか。

佐々木康人先生: いけばなは、1500年前から日本にあったといわれ、日本の寺社で仏に敬意を表すため、僧によって花が仏陀に供えられことが始まりでした。

いけばなというのは、利益を目的としていません。実は私たちは、自分で活けたいけばな作品を売ることはありません。しかし、何百年を経ても、いけばなは存在し続けています。私たちの先達は「いけばなで一番大切なことは、花の命を大切にする心」だと言い続けてきました。このことは現代から次の世代へと永遠に受け継がれていくことでしょう。

JF: 現代のいけばなは、日本人とくに若い世代の日本人の生活にどのような意味合いをもっていますか?

佐々木康人先生: かつて、いけばなは男性だけのもので、主に侍や聖職者が活けていました。明治時代(19世紀)になって、いけばなは女学校で教えられるようになり、多くの日本人女性がいけばなを習うようになりました。この時代、女性は家で家事をし、花を活け、子育てをしていました。時代が変わり、女性が外で働き始めると、家事をする時間や花を活ける時間がだんだんと少なくなってきました。いけばなも学校で教えられなくなりました。これが、なぜ今の若い世代がいけばなを知らないかという理由です。

 
また、昔の日本の家には、床の間という客室に設置された空間がありました。現在、都市部には、このような空間を持っている家はほとんどないでしょう。多くの人々は小さなマンションに住んでいるので、床の間はこのように狭い形式の空間には合わなくなり、自然といけばなを飾る機会が以前と比べすくなくなってしまいました。

しかし、最近になって先達は、新しい時代や環境に合わせた現代にマッチした活け方を創りだし、また一方ではいけばなは現代アートの一形態として認識されるようになるなど状況が変わってきました。

今、いけばなは新しい時代を迎えようとしています。

JF: 日本のいけばなには多くの流派があるとのことですが、どのくらいありますか?また、流派間で競争はありますか。

佐々木康人先生: 京都は、いけばな発祥の地です。いけばなは以前、皇族や聖職者の間で普及しているものでした。池坊はいけばなの流派の元祖だと言われています。江戸時代になり、首都の江戸は明治時代には東京と名前を変えましたが、日に日に発展していきました。ここで、多くのいけばなの流派が新たに現れました。これらの流派はその後、各都市や各地方に浸透していきました。皆さんおわかりのように、昔から日本人は花を愛していたのです。

統計によると、現在、300から400のいけばなの流派が存在し、流派間で競争があります。この競争の利点は、各派の創造意欲を喚起し、新しい花の活け方や美しさを追求する営みを支えていることです。ここ何年か私たちは、いけばなを盛り上げるため、コンテスト形式の展覧会を開催したり、自身の流派の中で、創作の才能を競ったりしています。

JF: 日本のいけばなは、他の国の華道と比較して、どんな違いがありますか。

佐々木康人先生: 花の活け方にはさまざま形があり、それぞれ特徴が異なりますが、比較するのはとても難しいものです。昨年ハノイを訪れた際、私は多くの花屋を訪れました。こちらの花は、とても美しく華やかです。一方、花の活け方をみると、秩序や深みが感じられないように思いました。たとえば、花と花の間に空間が意識されていなかったり、太陽を向いた花の動きを感じさせない活け方なのです。私にとって、このような花は、たとえ華やかで目を惹くものであっても、家に飾るにはよいのですが、いけばなとして格調高いものとはみなせません。また、いけばなにとって、花の色は重要な要素の一つですが、動きを感じさせる花の活力や新しい空間を作り出すこと、もっと大事なことなのです。

JF: なぜいけばなは芸術と呼ばれるのでしょうか。芸術としての華道と、趣味としての華道には、どのような違いがありますか。

佐々木康人先生: 私は芸術家ではありませんし、自分の華道作品が芸術作品とは考えていません。仮に、私の作品が全て自分のアイデアによるものだとしても、それらは一つの概念(コンセプト)に基づいているからです。概念を作り上げたのは先達だけが、芸術家と呼ばれるに値すると思います。私は一人の指導者に過ぎません。

 
私は、いけばなは、日本人の美しい生活文化の一つ、伝統文化の一つであると考えています。多くの人にとって、いけばなは日常習慣や趣味の一つと思われており、人によっては特別な機会にだけ花を活けるものかもしれません。また、地域によって、いけばなの習慣は違うのです。

JF: 通常、勉強を始めた人はどのぐらいで一人前に花を活けることができるようになりますか、また、どんな要素がいけばなを美しくさせるのでしょうか。

佐々木康人先生: いけばなの基本的な技術を身につけるには、3年かかります。基礎を身につけることは、とても大切です。基礎の習得は、自分の創作で最大の才能を引き出すために、今後皆さんを助ける土台となります。

いけばなを美しい作品にさせるために、まず重要なことは適切な材料や花を選ぶことです。花を活ける前に、活けるのにふさわしいと思われる花を選びます。どの花があなたに向って笑いかけてくるか、想像してみてから花を選んでください。最も重要なのは、花の命を大切に思うことです。

JF: いけばなを外国人に指導し海外で普及させることの意義は何ですか。

佐々木康人先生: 外国人にいけばなを紹介するのは、私にとってとても幸せなことです。多くの経験ができ、自らの向上の機会を得ることができます。もちろん、誰もが夢をもっています。私も、いつか自分が日本で一番上手ないけばなの達人になりたいと思っています。

多くの外国人にとって、いけばなを学ぶのは、とても難しいことです。ですから私は、いけばなは決して彼らが考えているほど難しくないという、逆のことを、彼らに感じてもらいたいと思っています。いけばなに対しての思いや楽しさを彼らに感じてもらうために、私は、いつもとても簡単にできることを指導するよう心がけています。

JF: 先生はベトナムでいけばなを発展させるために、たとえば、学校をつくったり、国際華道試験を作ったりするなど、何か考えがありますか?

佐々木康人先生: 具体的なアイデアはありませんが、何かする前に、まず基礎的な土台を作らなければなりません。私たちにはベトナムで支部を設立したいという想いがあります。すでに、シンガポール、タイ、インドネシア、台湾のような国には代理支部があります。しかし、活動を推進してくれる人や指導教師を養成することはとても難しく、それは私たちにとっての初めの困難です。ともかく私たちは頑張っています。

ハノイでは、かなり多くの学生がいけばなを勉強してくれていますが、私が恐いのは、大学を卒業した後に、いけばなを止めてしまわないかということです。皆さんが職業としていけばなを実践してゆく途はとても難しく、実は、私の国でも同じ状況です。

池坊華道会で幸運だったのは、宮崎先生に出会えたことです。先生はハノイ大学いけばなクラブを設立され、学生に対し、いけばなの講習を何度も主宰されています。いつか、多くの人が先生のように、心から伝統文化を想ってくれること、また、このような活動がより大きく、多くの都市で開かれることを願っています。

JF: 興味深いお話をしていただき、ありがとうございました。先生の想いが現実のものとなりますよう、私たちも願っております。



 

  

佐々木康人先生のインタビューを通して、いけばなが伝統文化として発展してきた歴史、また、華道を職業として実践されている方のお考えを聞くことができ、いけばなの芸術性についても理解することができました。では、いけばなクラブの学生さんに、いけばな専門家になる意思がある人はいるのかを含め、お話を聞いてみましょう。

JF: 皆さんこんにちは! 今日の佐々木先生のいけばな講習会は楽しかったですか?


いけばなクラブの学生(学生): こんにちは! 今日の講習会はとても楽しかったです。いけばなを学べば学ぶほど、いけばなが好きになります。でも、(日本の)いけばなというものはとても難しいです。とくに始めたばかりの頃は誰でも難しく感じます。でも日本への想いも強くあるので、私たちはもっともっとがんばりたいと思います。

今日は、生花(しょうか)を教えていただきました。花を活ける際に注意することは、空間を意識することです。3次元を作るように前や後ろから見なければなりません。活け終わったとき、私たちは、自分達の作品をとても美しいと思いましたが、先生は、それはまだもっと美しくなるとおっしゃいました。先生の説明を聞いて、私たちがわかったことは、いけばなの芸術性の中で、花を活ける者は、自然に近い感覚を創るために、空間を作り出さなければならないということです。そのほか、花はいつも太陽の方を向いているということ、すなわち生の方向を向いているということを学びました。しかし、もっと大事なのは、花を(痛みを感じたり笑顔をうかべたりする)人間と同様にいくつしみ、命ある花を敬う気持ちをもって接しなければならないということです。

 


ハノイ大学いけばなクラブの学生


JF: みなさん家でも花を活けますか?ベトナムの活け花は、日本のいけばなとどんな相違点がありますか?

学生: 私たちは花を活けることが好きなので、家でもよく花を活けます。でも、ベトナム流です(笑)。今日の講習を通して、私たちは日本とベトナムの生け方の違いも感じました。共通点は、花を活ける人は、いつも花を美しく見せるためにどうすればいいか、花ごとの長所を生かすためにどうすればいいかを考えているということです。また相違点は、ベトナム人の華道家は、花を飾る際に、枯れた枝や落ち葉を絶対に使いません。これに対し、日本の華道は、そのような枝や葉を、独特で自然な作品にするために使用します。

JF: みなさんの生け花クラブはどのぐらい会員がいて、どのような活動をしているんですか。

学生:
設立したばかりの頃、このクラブは1週間に1回活動していました。でも、学生の授業日程が変わってしまい、現在は、2週間に1回活動しています。

会員は全部で20名いますが、学内の学生が中心です。もちろんクラブは年齢や対象に制限はありませんので、日本文化が好きなら、誰でも参加でき、いけばなを楽しむことができます。宮崎先生の指導を受けられることで、クラブ活動が維持されています。宮崎先生はいけばなを学んでおられ、かなり経験をもっています。また先生は、私たちに教えるためにいけばなを更に研究しています。つまり、先生は、クラブや学生に対しての想いが深いのです。

JF: ここにいる皆さんの中で、佐々木先生のようないけばなの専門家になりたい人はいますか?

学生:
先生のようになれるなんて、夢にも思っていません。でも、もし機会があれば、今のようにあれこれ考えずに花が活けられるように、もっと深くいけばなを勉強したいです。

私たちにとって、専門的職業としていけばなを追求することは難しいです。なぜならベトナムはこのクラブ以外には学校もいけばなの組織もありません。私たちはただ趣味として勉強するだけです。もちろん、将来については、誰にも分かりません。ただ、今の時点でわかっていることは、学べば学ぶほど、活ければ活けるほど夢中になってしまいます。このままでは、いけばなという世界の中に惹きこまれ、職業として考えるようになってしまうかも知れません。(笑)。

JF: クラブ会員である皆さんは、いけばなについて、更にどんなことを学びたいですか。

学生:
残念なのは佐々木先生がベトナムにいる時間がとても短いことです。ですから私たちは基礎的な活け方しか学ぶことができません。先生が更に美しい活け方を私たちに教えるため、ベトナムにもっとたくさんいてくださることを望んでいます。

学生: 私たちの願いは、多くのベトナムの若者が、私たちのようにいけばなに興味をもってもらうこと、また、趣味としてだけではなく、この分野で職業としての追求ができるようになることです。それが、更なるベトナムでのいけばなの発展に繋がることだと思います。

皆さんどうもありがとう!皆さんの夢がかないますように!

 

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